Prof. Kawata's Cyber Lab

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河田聡について

1951年、大阪府池田市生まれ。大阪教育大学附属高校卒業池田校舎卒。大阪大学応用物理学科卒、同博士課程修了。工学博士。

現在、阪大教授、理研主任研究員、ナノフォトン(株)会長。OSA(米国光学会)の国際諮問委員会議長・理事。(社)日本分光学会の元会長、国際学術誌 Optics Communications (Amsterdam) の元編集長、など。

研究分野は、分光学・光学、ナノテクノロジー・ナノサイエンス、バイオフォトニクス。特に、近接場分光学・ナノフォトニクス、プラズモニクス、3次元2光子光加工。かつては信号回復論、近赤外分光、共焦点顕微鏡、光記録、放射圧制御など。

成果はNature誌、ギネスブック、アメリカの中学2年の数学の教科書などに掲載。著書編著は27冊。

紫綬褒章、日本IBM科学賞、文部科学大臣表彰、島津賞、日本分光学会賞など受賞。学術審議会委員、文化審議会委員などを歴任。

大学の独法化前の2003年にレーザー走査ラマン顕微鏡の製造業ナノフォトン(株)を創業。大学の運営改革プロジェクト(Super COE)である「阪大フロンティア研究機構」の初代機構長。そこで毎月行ったFRCサロンを母体に平成洪庵の会を設立。大阪駅北ヤードの再開発コンペで「運河と学問の町」の提案で最優秀賞を受賞。適塾をモデルに理系博士の新しい道を模索する科学者維新塾を創設。

略歴

1974年 大阪大学応用物理学科卒

1979年 同大学院博士課程終了、工学博士

1979年 カリフォルニア大学アーバイン校電気工学科研究助手

1981年 大阪大学助手、助教授を経て、

1993年ー現在 大阪大学工学部応用物理学科教授(生命機能研究科教授兼任)

2002年ー現在 理化学研究所主任研究員(兼務)

2002年ー現在 学習院大学理学部物理学科非常勤講師

授業

阪大でこれまで、応用光学、光エレクトロニクス、科学計測学、計測制御工学、ナノ光計測学、などの講義。2002年からは学習院大学理学部物理学科でも非常勤講師。中国科学院・理科技術研究所名誉教授、モロッコ・Al Akhawayne大学客員教授。東京大学、東北大学、名古屋大学、徳島大学、宮崎大学などで非常勤講師。シドニー大学、オクスフォード大学などで客員教授。三鷹第4小学校、荒川第3中学校、川越高校、長岡高校、丸亀高校、松山西中等学校などでも授業。教科書は「超解像の光学」「近赤外分光法」「Near FIeld Optics and Surface Plasmon Polariton」など。

●09年4月から阪大で新しい講義先端科学と社会論開講。応用物理学科目4回生前期、日本語。10年度からは3回生前期。

●今年の後期は学習院大学院物理で講義中。9/11(金)午前・午後、9/29(火)午前(田中)、10/6㈬午前(代理)、1/15㈮午前・午後

●12/9㈬に豊中キャンパスCで、先端教養科目「光とナノがつくる未来」

●2010年2月4日(月 に、応用自然科学科の先端科学序論・特別講義を講義します。教養部C大講堂(旧ロ大講)。



講演会

講演会情報

月日講演会講演場所・講演時間
2010年12月15日 Pacifichem 2010  Honolulu, Hawaii 
2010年12月11日 PHOTONICS 2010 Indian Institute of Technology Guwahati, TBA 
2010年11月29日 MRS Fall Meeting Boston, Massachusetts 
2010年10月18日 Hearaeus-Conference Bonn/Bad Honnef, Germany 
2010年8月29日 NFO-11 Beijing, China 
2010年8月9日 ICORS XXII Boston, US, TBA 
2010年8月2日 SPIE2010 8/1-8/5 SPIE Optics+Photonics "Nanoscience+Engineering", 8/2 8:30-12:00(session time) 45min.(talk) 
2010年7月26日 日米韓台WS つくば国際会議場 
2010年6月15日 総合課目 大阪大学吹田キャンパス U2-312 16:20-17:50 
2010年6月1日 International Conference on Nanophotonics 2010 つくば国際会議場・TBA 
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今月のメッセージ・バックナンバー

今月のメッセージ

月日タイトル
2010年03月 絶滅危惧種 
2010年02月 エレベーター・スピーチ 
2010年01月 少子高齢化社会はいいことだと思う、、、。 
2009年12月 もしスパコンがなかったら、、、 
2009年11月 フラタニティー 
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今月のメッセージ NEW

絶滅危惧種


生態系において生物の多様性が失われつつあります。環境を保全し生態系を守ろうと、世界でいろんな活動が展開されています。日本でも「2020年までに絶滅危惧種を生み出さない」という法案が準備されているそうです。

ところが、私は憂鬱な気分なのです。政府やマスコミが地球温暖化と二酸化酸素削減を言いはじめたときにも戸惑いを憶えましたが [1]、今回はもっと気が重い。

リチャード・ダーウィンの『種の起源』によれば、種の進化は突然変異生存競争がもたらします[2]。自然条件と飼育栽培下で変異の程度は大いに差があり、飼育栽培下における変異の方が遥かに大きいそうです。遺伝子操作は、その極端なケースです。一方、生存競争にも自然淘汰と人為選抜があります。生態系は多体の複雑系であり、人為的に目的指向の制御をすることは困難です。自然の生態系の中で食って食われて寄生して寄生されて、食物連鎖ができあがっているのです。もし敵がいなければ、種は生殖によって指数関数的に増加してしまうはずですが、敵がいなくなるということは彼等にとっての食糧難を意味します。増えすぎた種は、一気に大量死そして絶滅へと進みます。

そして実際に、種は絶滅します。地域を支配してきた種が絶滅すると、その後に多様な種が生まれます。雑草を一生懸命抜いてお気に入りの花を育てようと思っても、雑草を抜ききったとたんに新たな雑草がでてくるのです。

恐竜が絶滅して、人が地球に生き残ることができました。自然淘汰です。種の絶滅はとても悲しいことですが、絶滅は生態系における進化の重要な要素なのです。絶滅種があって、新種が生まれるのです。人為的な操作は短期的に成功しても、長期的にはかならず失敗に至ります。「2020年までに絶滅危惧種を生み出さない」という法案も、人為的すぎて危なっかしいと思います。

ナショナル・ジオグラフィックの最新号(2010年3月号)に『オオカミとの闘い』と題した特集記事があります。日本において狼(ニホンオオカミ)が絶滅して100年以上になりますが、アメリカでも家畜を襲うと言う理由でタイリクオオカミが射殺されたり毒入りの餌で殺されて、1930年代には西部からいなくなったそうです。そして、1974年にはアメリカ本土で絶滅危惧種に指定されました。これらは人為的淘汰です。ところが自然愛好家の意見もあり、1995年にイエローストーン国立公園とアイダホ州の自然保護地区に、カナダで捕獲した狼を放したそうです。最上位の捕食動物が戻ってくることで食物連鎖が修復され、生物の多様性が復活できる可能性があるというわけです。オオカミがいなくなった後にエルク(野生のシカ)が増えすぎて、それが植物を食い尽くしたために逆にエルクを射殺なければならなかったのです。オオカミが放されてからはウシもエルクもオオカミにやられないように頻繁に移動するようになったため、若木が育ち始めて豊かな森になったとか。そうすると小鳥がやってきて、そして木々が育ち、昆虫や両生類も住み始めます。ここまでならいい話なんですが、早くもまたオオカミが繁殖しすぎて、問題が振り出しに戻りつつあります。人為的操作は自然にはなかなか通じがたいものです。
捕鯨禁止運動も海の生態系を狂わせます。クジラが海の生物を根こそぎ食い尽くしてしまうおそれがあります。ヘラルド・トリビューン紙によれば、捕鯨運動に反対するオーストラリアではカンガルーが年間に300万頭以上殺されているとのこと。本当かなという数字ですが、その後、訂正は出ていません。

種だけではなく個体もまた、その命は有限です。高齢者が死んで、そして若者が育ちます。人と社会の進化は、世代交代によって生まれるのです。「すべての種を残す」という生態系に対する人為的操作は、新種が生まれるチャンスを奪い、結果的に生態系の環境破壊を生む恐れがあります。

スウィフトはガリヴァーをラグナグ王国(不死人間の国)に連れて行き、不死人間に会わせました。スウィフトは、人が死ぬことは悲しいことだけど死なないことは醜くて恐ろしいことなんだ、と教えました。当時のイギリスの長老政治に対する皮肉ですが、真理かもしれません。

種が絶滅することは悲しいことです。人が死ぬこともとっても悲しいことです実は、昨夜、私の義母が亡くなりました。義父が死んで、13ヶ月後です。個体と種の死は、新しい種と子孫の未来への進化です。種の絶滅は自然淘汰であり、進化の過程です。




さて、やっと本題。

JALは、航空業界の絶滅危惧種でした。この絶滅危惧種を人為的に救済することは、航空業界という生態系にとってどんな影響を与えるのでしょうか。JALが絶滅すれば、そこからたくさんの優秀なパイロットや優秀なキャビンアテンダント、有能なメカニックやグランドのサービスの人たちが、市場に出てきます。彼等を狙って、たくさんの新しい航空会社が生まれてくることでしょう。種の多様化です。古い体質のJALに代わる新しいコンセプトの航空サービスのビジネスが生まれるチャンスを、日本は否定したのです。自然淘汰を経ずに進化はありません。世界の航空業界の生存競争の中で、この人為的選抜は将来に取り返しの付かない失敗を与えるかもしれません。

生存競争で生き残れない絶滅危惧空港である関空を人為的に残して、伊丹を射殺しようとする知事さんの行為は、生態系を破壊し進化を妨げます。これもまた、自然体でいかれるのがよかろうと思います。SK

Copyright © 2002-2009 河田 聡 All rights reserved.

[1] このサイトでは私はこれまで、「温暖化対策とは環境利権という新たな利権構造の構築ではないか」という問いかけを繰り返し行ってきました(2005年8月「お稲荷さん」、2005年10月「万博・反博」2007 年10月「ノーベル賞授賞記念、ゴアさんは昔の方が格好良かった」2008年10月「不都合な科学」など)。『エコポイント』なる制度は環境の名を借りた『環境利権』です。本気で環境を守りたければ、ハイブリッドカーや電気自動車を開発して製造して消費者にエコポイントの餌を吊って買わせるのではなく、自家用車を捨てて自転車とタクシーを使うべきでしょう。古いエアコンのエネルギー消費が大きいというなら、エアコンを買いかえるのではなく扇風機と団扇で辛抱するべきでしょう。
 マイケルクライトンが厭味たっぷりに「State of Fear」という環境利権の小説を書いても、日本ではまるで通じませんでした。 この小説は翻訳されて日本では「恐怖の存在」というタイトルが与えられています。しかし、Stateは「州」あるいは「国」の意味もあり、『脅されて怯える国』という意味に捉える方がいいと思います。地球の温度が上がって大変なことになると脅されて『恐怖の状態』にある国です。
 そのマイケルクライトンの遺作『NEXT』が、昨年出版されました。『NEXT』を書いたときのクライトンはすでに死期を悟っていたのでしょうか。『ジュラシックパーク』の時より遥かに痛烈に(それでもユーモアたっぷりですが)、遺伝子工学に対して批判をしています。死後に彼のマックの中から見つかった本当の最後の遺作『パイレーツ』には社会批判はなく、最後の冒険小説を楽しんで書いかの如きです。
 小説家としてだけではなく思想家として社会と科学にとって大きな影響を与える存在だったマイケル・クライトンの死は、本当に残念です。最先端科学のエシックスを誰が語るのでしょうか。最近になってようやく温暖化のデータ捏造などの報道が出てきましたが、日本のマスコミは熱心には取り上げません。そして相変わらず、環境に名を借りた天下り組織がさらに増えそうな気配です。

[2] 渡辺政隆『種の起源』、光文社古典新訳文庫、2009年9月。ダーウィン生誕200年かつ『種の起源』150年記念なんです。渡辺さんについては2008年12月の私のメッセージで紹介しました。


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