2003年3月のメッセージ

江副さん

江副浩正氏の裁判があり、有罪の判決が出たそうです。今回の裁判の結果を踏まえて、メディアや政党は一斉に、再度強い非難のメッセージを出しています。私は江副さんご自身のことは何も知りませんし、リクルート事件についてもほとんど忘れてしまいました。しかしながら、私は実は、江副さんをとても尊敬しています。人は人である限り、いいこともすれば悪いこともしてしまいます。気を付けていても、つい奢れるときもあれば、気を付けていてもついしくじるときもあります。決して悪いことも失敗も起こさないなら、それは人ではなく機械でしょう。いや機械ですら失敗をするでしょう。人とは、結局はその人の善行と悪行の両方を見て判断するべきだろうと思うのです。田中真紀子さん、加藤紘一さん、辻元清美さん、その人のプラス面を評価せずにマイナス面だけで社会から追放するのは、いかにも人間味のない国のように思えます。

その昔、どこかへ引っ越しをしようと思ったら、その駅の近くに行って、不動産屋を何軒か回ってそのときにある物件を何軒か教えてもらい、不動産屋さんと一緒に物件を見に行って選びました。相場は不動産屋さんの言うことを信じるしかありません。今も余り状況は変わっていないと思われるかもしれませんが、実は大違いです。今では、各地域での相場や物件数・種類などが雑誌「住宅情報」ですべて分かります。だから無茶な値段はありません。不動産屋さんとの交渉が有利になりました。

その昔、就職や転職をしようと思ったら、いろいろな会社を訪問してどんな人材を求めているかや給与面や厚生面などを聞いて、自分なりに他の会社と比較して、そして応募しました。待遇や賃金は、会社が決めるのに従うしかありませんでした。今でも余り変わらないと思われるかもしれませんが、実は大違いです。いまでは会社を回らなくとも、「リクルート」や「とらばーゆ」「フロムエー」を見れば、あらかじめどの会社がどんな人を求人をしているかを、求職者がまとめて知ることが出来ます。これらの雑誌には、新聞広告と違い圧倒的情報量がまとめて提供されています。

売り手市場から買い手市場へ、情報提供者と顧客が直接交渉する時代を作ってくれたのが、「住宅情報」や「リクルート」「とらばーゆ」などのビジネスを始めた江副さんだろうと思うのです。このような新しいビジネスは消費者や顧客には感謝されても、既得権を持つ既存の業界の方には脅威ですから、業界の秩序を守ろうとする官庁には認められがたく、いろいろ無理をされたのでしょう。大企業しか持つことの出来ないコンピュータを時間貸ししたり、電話の回線をリセールしようとしたのも江副さんです。それが役所に認められにくくて、政治家に助けてもらおうとして、自分が創設したリクルートコスモスという会社の株を先に渡したことが、犯罪となったのです。

でも、江副さんがいなければ、不動産業界も求人・求職業界も旅行業界(「ABROAD」という雑誌を出して、JTB支配から旅行者を解放しました)も、顧客より業者が力を持ち続けたことでしょう。江副さんの私たち国民への貢献は、彼が犯したミスより遙かに大きいと私は思うのです。 ダイエーの創業者・中内功氏にも手厳しい批判が展開されています。確かに経営戦略を誤り、跡継ぎ問題でも人間味を出されすぎたかもしれません。しかし、メーカーが価格を一律に決めていた日本の流通業界に勇気を持って価格破壊をもたらし、オレンジジュースを日本に輸入してそれまでの数分の1の値段で提供し、神戸の震災の時には本社が倒壊しているのにもかかわらず、被災者にただ1社だけ店を開けて商品の提供をし続けたのは、ダイエーであり中内さんだったと思います。

いまの日本は減点主義の社会です。持ち点百点からどれだけ点数を失うかが評価基準のようです。いいことをしても持ち点の百点を超えることは出来ず、冒険をせずにミスせずに持ち点を守るのが一番成功するようです。私は加点主義の社会を待っています。メディアも評論家も、けなすことばかりではなくほめることも学んでほしいと思います。元気のある社会、それは冒険による社会への貢献であり、敗者も復活出来る社会です。江副さんや中内さんの社会貢献には余りある点数を差し上げてほしいと思います。そして、江副さんの復活を祈っています。 SK

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