サバティカル:今月のメッセージは休み 6月15日。今月のメッセージがなかなか更新されません。5月半ばから日本の日常生活・日常業務から脱して、いまPalo Altoという町に暮らしています。ここに住むのは、40年ぶり。20歳の時に1ヶ月半ほど暮らして以来です。東方見聞録か西洋事情でも書くだろうと思われる方もおられるかもしれませんが、いえいえ、書きません。私は今サバティカル中。だから今月と来月のメッセージはお休みです。10年勤めた理化学研究所からの、最初で最後の3ヶ月サバティカルを活用しての滞在です。日常生活から脱しないといけないんです。 日本の国立大学にはサバティカル制度はありません。独法化したとはいえど、いまも実質的に国家公務員である大学教員が半年とか1年間授業をせずに、会議に出ず試験をせず休むことなどできないのです。それでもサバティカルを取れる人は、研究費がなくてポスドクや大学院生がいなくて大学からもいなくても叱られない先生に限られます。あるいは、周囲に大迷惑を掛ける身勝手で我が儘な先生です。私の場合もそのどっちかです。 アメリカでも同じです。まだ研究室が小さくてポスドクや学生が少なくて、設備や予算を持っていない若い先生はしっかりとサバティカルをとって1年近く海外に行かれますが、研究室活動が忙しくて様々な仕事を持っておられる先生は、長く留守にすることはできません。サバティカル中とはいっても家にいて仕事をし、週1、2回大学に出てきて学生とディスカッションをしたり、海外に行ってもテレビ会議やスカイプで常に研究室のスタッフと遠隔ミーティングをします。それでも、日常の会議や授業を免除されることは、精神的に大いなるリラックスとなり、新しいテーマを探したり本を書いたりして過ごせます。 私の場合も、こちらにいても毎日百通のメールを処理しスカイプやメールで連絡を取り、溜まった書き物や審査の仕事をして、その上にこちらの研究室の連中やいろんな教授と議論をするので、日本にいるよりも忙しくしています。加えて、ひとりで慣れない買い物をし、ひとりで食事を作ってひとりで洗濯掃除をして、てんてこ舞いです。それでも、カリフォルニアの青い空の下、専用のバイクレーンを快適に自転車で走りまわり、誰もいないだだっ広いマシンジムで汗を流し、北新地も六本木もない生活は平穏そのもので、大いなるリフレッシュとなっています。 日本からiPhoneに電話を掛けてこられる方がおられますが、電話には出ません。テキストメッセージも見ません、済みません。iPhone4をお持ちの方は、FaceTimeあるいはKakao Talkでご連絡くださって結構です。 いま、数日だけ日本に帰国しています。それで、今月のメッセージを思い出して、つらつらと書き始めてしまっています。1ヶ月経って帰ってきて一番驚いたことは、新聞記事が1か月前と全く変わらないことです。ミリ・マイクロシーベルトの数字の羅列、被災者の日常を知らせるニュース、原子力は危険だから原子力発電を止めるべきというコラム、カンさんが辞める辞めない、、、、、。1ヶ月分の新聞をまとめて読み始めたら、一ヶ月間、毎日毎日同じ記事の繰り返しでした。びっくりです。世界ではいろんな事件があり、いろんなニュースが流れているのに、一ヶ月間(震災の日からでは、3か月間)、日本の新聞社は毎日毎日同じ記事を書いていたようです。こういうのを、思考停止というのでしょうか。 昨夜は、新宿でおばちゃん達が「原発は危険」「原発を止めろ」というプラカードを掲げてデモをやってる場面が、テレビのニュースに流れました。レポーターの人に口々に、「原発は危険だ!」と叫んでおられました。この人達は、きっと火力発電所は安全だと信じておられるのでしょう。重油を燃やして電力を生む火力発電所で火災事故で亡くなられた人の数は、原発事故で亡くなられた人の数 (福島では0人です) よりも遙かに遙かに多いのです。飛行機事故は怖いの飛行機には乗らないと言う人が、電車や車には平気で乗られるのに似ています。 鉄道や車の 乗客数に対する事故死者の比率は、飛行機とは |
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