2013年5月のメッセージ

Googleめがねは失敗する?

商品企画力に自信を持っています。iPhoneが出るよりずっと以前から、今のiPhoneそっくりの商品を提案していました。 常に胸のポケットに入っていたのは,A6の薄っぺらな手帳 [1]。この大きさの携帯電話付のPDAを作りたいと言ったら,そんな大きな携帯は売れないと言われました。当時は折りたたみ式携帯が流行っていたのですが,私には折りたたみは面倒でした。携帯電話とPDA(パームコンピュータ)と電子辞書とICレコーダーとウオークマン(その後はiPod)、そして時にはカメラ(コニカミニ)、これら全部をジャケットとズボンのあちこちのポケットに入れて,持ち歩いていました。ポケットが膨れるし重いし、どのポケットに入っているかを捜さなくてはいけなくて大変です。パームコンピュータに辞書を入れていたのですが,動きが遅くて苛々しっぱなし。それでもHyper Cardを使ってパームとマッキントッシュ間でスケジュールを同期させていました。十数年前のことです。


結局、当時は日本のメーカーはどこも私の企画商品を理解してくれませんでした(正確に言うと、説明するチャンスもありませんでした)[2]。だからiPhoneが発売されたときは、自分のアイデアが採用されたと大喜びしました。


その私が企画しない商品は、腕時計型のiPhoneです。私は手首を締め付けられるのが嫌いだからです。腕時計の金属か革のベルトは重いし、手首に巻き付けると肌が気持ち悪く、好きではありません。手錠で縛られている気分なんです。だからすぐに外してしまい、あちこちで置き忘れてます。iPhoneのお陰で、私は腕時計をはめることがなくなりました。時間が知りたければポケットからiPhoneを出して見ます。今、このメッセージはワシントンの空港のラウンジで書いているのですが、飛行機の出発時間になるとiPhoneが振動して時間を私に教えてくれます。時計を見なくていいんです。


腕時計に限らず,私は身体を縛られるのがとても苦手です。ネクタイは、余程の時でないと締めません。首を締め付けられて、窒息しそうになります。最近になって日本でもノーネクタイで通勤したり仕事ができるようになって、精神的にも自由になれてとても良いことだと思います。


というわけで,私は腕時計型のiPhoneなんて商品は企画しません。Steve Jobsなら考えないはずです。もし本当にAppleがこれを売り出すことがあれば,JobsのスピリッツはAppleからは消え去ったということだろうと思います。JobsはMacからケーブルを無くしCD/DVDを無くしハードディスクドライブを無くしてMacBook Airを作り,MacBook Airからマウスを無くしてキーボードを無くしてiPadを作りました。Siriによってタッチパネルすら無くそうとしています。彼の頭の中にその先に何があったのか、私には見えます。それは腕時計ではありません。彼も機械に縛られたくなかったはずです。機械に使われたくなかったはずです。


腕時計よりももっと酷いのは,Googleのめがねです。これは日常生活において,腕時計よりももっと鬱陶しい。テクノロジーとは,人の負担を減らすためにあるはずです。洗濯機,冷蔵庫,掃除機、炊飯器,エアコン、自転車、自動車、テレビ、ラジオ、全て人の暮らしを快適にするために開発されました。パソコンやiPadも、人間の労働負担を減らしより楽しい生活が送れることが使命です。


コンタクトレンズの発明と普及は,人類を眼鏡から開放しました。コンタクトのお陰で、目の前が明るくなり鼻が軽くなりました。視界を妨げるgoogleめがねをつけると鬱陶になると思います。目の前に機械をぶら下げて視野を狭めるウエアラブルコンピュータという発想は,私の商品企画にはありません。


売れるでしょうか、失敗するでしょうか?


[1] 拙著,「論文・プレゼンの科学」に書いています。

[2] シャープのザウルスというPDAはこれらのいくつかを集積化していましたので、シャープがザウルスに携帯を加えたらiPhoneが作れたはずなのに残念でした。目の付け所はシャープだったのに,経営者が液晶テレビだけに集中してしまい、ザウルスはまさに絶滅したのです。


追記:1965年に「スーパージェッター」というモノクロのテレビアニメが放映されました。丸美屋食品の「ふりかけ」のコマーシャルを思い出します。未来から来た少年ジェッターは腕時計で時間を30秒間だけ止めることができ、腕時計で流星号を呼び出すことができます。「流星号、応答せよ。流星号、、」。これって、iPhone!!


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