2015年お正月のメッセージ

昔は雪が降っても雨が降っても電車は走ってた、、、。

正月の新聞記事に、世界の若者の意識調査の比較の記事が載りました。若者とは未来に向けて大きな期待と不安を持つものですが、世界中で日本の若者だけが全ての項目で他国の若者より将来不安が強いという結果が数字に表れていました。世界中で最も平和で安全で豊かなこの国の若者がなぜ他の国よりも将来に不安を持っているのか、海外の人たちには理解できないでしょう。おそらく今の日本の若者には将来の選択肢が多くありすぎて(すなわち恵まれていて)、その中からどれを選んだら一番得な選択になるのか分からないから、不安になるのだろうと思います。将来に一番得をする道を選ばなかったときに、未来において反省することに対する不安です。

親父に「おれの後を継いで、うちの商売をやってくれ」と言われたもののそれが嫌で悩むのでもなく、大学院に進学したいのに授業料が払えなくて諦めざるを得なくて悩むのでもないのです。むしろ未来の選択肢が多すぎて悩むのだろうと思います。選択することが不安なんでしょうか。贅沢な悩みです。若者人口は、私の時代と比べてなんと半分に減っています。だから若者の仕事はたくさんあるはずです。それなのに悩むのは、いま将来を決めてしまわなければいけないという気持ち、焦りから来るのかもしれません。私は、しばらくフリーターになって将来をいま決めないという選択も良いと思います。

「科新塾」や「科学社会論」の授業で私は、学生・塾生に少なくとも3つの夢を持つことを勧めています。一つだけの夢(将来)を決めることは難しくても、3つの夢を持てるとなると少し余裕ができると思うのです。実際に私は常に複数の夢を持って生きてきました。そしてどれかの夢が実現するチャンスが訪れたときに、挑戦してきました。たとえば起業してみたいと学生の時から思っていましたが、実際に会社を興したのは50歳を過ぎてからのことです。未だ実現していない夢もたくさん残っていますが、これからの楽しみです。

将来不安は最近の若者特有ではなく、広く最近の日本人文化だと思います。日本人全体が、将来不安に悩んでいます。そしてそれはとても贅沢な不安です。その典型的な例は、このエッセーの題名にも見られます。天気予報が「明日に大雪の恐れ」というと、最近の航空会社はいち早く翌日の午後の飛行機の欠航までを決めてします。未だ全く雪が降っていないのに、です。そしてだいたい翌日は晴れるか、降ってもたいしたことないという結果になります。「台風上陸の恐れ」という天気予報だけで、最近は翌日の電車の運休が決まります。「過去に経験のない」という言葉がやたら使われますが、過去に経験のないほど当たりません。

当日になって、運行するか欠航するかを1便ずつ判断するのはとても面倒なんでしょうね。乗客がカウンターに何度も尋ねてくるでしょうし、ダイヤは乱れて空港の駅も発着を待つ乗客で大混乱でしょう。それなら、早々に翌日の運行を諦めてしまった方が楽です。「休み」になれば、楽しい。「混乱」と「休み」は大違いです。

でも、それでは公共交通機関としてビジネスになりません。飛行機を飛ばさなければ、収入が得られません。電車を走らさなければ、赤字です。乗客だって休めば楽ですが、それでは仕事になりません。動いている交通機関を探して、時間を掛けて遠回りをしてでも必死に目的地へと向かいます。翌日の運行業務を早々に取りやめることを決めることは、公共交通機関として無責任極まりないと思います。昨年は、夕方4時以降の全便運休を決めたこともありました。確かに運行しなれば、事故はなく遅延もありません。責任を問われることはなく、運行ダイヤの工夫もしなくて済むでしょう。

しかし、乗客は観光客だけではないのです。家族・親戚・友人が病気になりあるいは危篤になりどうしても移動が必要な人、とっても重要な会議や緊急の仕事を持つ人、台風だからこそ突然移動が必要となる人、そのほか様々な事情で移動が必要となる人たちに対して、公共機関を任される企業は安全に十分注意をしつつも輸送をするための最大限の努力をするべきだと思います。鉄道会社で運休をいち早く決めるのは、いつもJRです。昨年も東京で私鉄は一社も運行取りやめない中、JR東日本だけが雨・雪の可能性を理由に翌日の運休を決定したことが複数回ありました。どちらも大した雨・雪にはなりませんでした。一昨年9月の京都地区への豪雨の時は、JR西日本だけが運行を取りやめました。当日は京田辺で応用物理学会が開催中でしたが、大阪に宿泊している人たちは学研都市線の途中までの折り返し運転となったため、会場に行けませんでした。近鉄など他の私鉄は乗り換えサービスを続けました。思わず、かつての国鉄や日本航空の年中行事のストライキを思い出しました。

たくさんの選択肢を持って生きることを将来不安と思うのではなく、人生の楽しみだと考えられないでしょうか。早くに答えを一つに決めることは楽かもしれませんが、多くの可能性を潰してしまうことになるかもしれません。

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